ハッピーに働く、とは?【前編】――ジュエリーブランドHASUNA代表取締役社長CEO 白木夏子さんインタビュー

2019.2
11

ハッピーに働く、とは?【前編】――ジュエリーブランドHASUNA代表取締役社長CEO 白木夏子さんインタビュー

ハッピーゾンビ

日本を代表するジュエリーブランドHASUNAの代表取締役社長CEOでありながら、一児の母でもある白木夏子さん。そんな彼女が考える、今後の働き方や熱中できる仕事の見つけ方などをテーマにお話を伺った。

――白木さんのプロフィールをご紹介いただけますか?

2009年に創業して、ジュエリーブランドHASUNAを経営しています。本店は表参道にあり、全国の百貨店などでも取り扱っていただいています。主に扱っているのは、結婚指輪や婚約指輪、ファッションジュエリーです。

創業時から、ものづくりを通じて貧困問題や環境問題の解決に導くようなことがしたいと考えていました。母がファッションデザイナーだったということもあり、洋服やアクセサリーなどを作るのが好きで、こうした業界に憧れていたんです。

高校生の時、ファッション業界の厳しさを知っていた両親からこの業界を志すことを反対されていたので、諦めて海外に出ることを決心しました。

留学先で、発展途上国の貧困や環境問題に関して勉強しており、ファッション業界に行かないのであれば世界を飛び回って活躍したいと思いました。その時に心を惹かれたのが、貧困問題などグローバルイシューの解決をすることでした。

大学1年生の夏休みに、南インドのチェンナイから車と徒歩で5~6時間かけたところに「アウトカースト」と呼ばれるカーストにも入れないような人たちが住んでいる村があり、そこで2ヵ月間過ごしました。

その村の人たちは過酷な環境の鉱山などで働いていて、笑顔もありませんでした。私たちはジュエリーに高いお金を出して買っているのにもかかわらず、彼らのところにはほとんどお金がまわっていないというところに、とてもショックを受けました。

鉱山から採取されるのはジュエリーだけではなく、化粧品のパウダーやレアメタルなども含まれています。しかし、それは私たちの便利で美しい世界とはかけ離れていて、そうした貧困問題を解決するには、資本主義の構造自体を変えないといけない。そこで自分なりの理想のビジネスを起ち上げ、その事業を通じて業界を変えていくことで解決することができるのではないかと思い、現在のHASUNAを起ち上げました。

ビジネス的には、パキスタンや中米のベリーズ、アフリカのルワンダといった、世界中の鉱山労働者と研磨工場の人たちと一緒にジュエリーを作ることで、身につける人も作る人もみんなが笑顔で幸せになれるものづくりを目指しています。

 

――「HASUNA」と名付けられた理由はなんでしょうか?

蓮の花から来ています。

蓮の花は、インド、ベトナムなどアジアの国々、特に仏教やヒンズー教の世界で聖なる花として大切にされていて、「清らかで美しい力」「浄化」の象徴とされています。

そんな蓮の花のような力を持つジュエリーブランドであったらいいなと思い、HASUNAと名付けました。

 

ポスト資本主義の形をみんなで作っていく組織を起ち上げ

――現在の組織におけるミッションを教えていただけますか?

これまで10年間、先にも申し上げたHASUNAというジュエリーブランドをやってきましたが、それを進化させるために、2018年から準備していることがあります。それは、売上や利益追求型の行き過ぎた資本主義とは異なる「ポスト資本主義」の事業体を作ること。私が今までHASUNAで追求してきたような、サステナブル(持続可能)でお客様も作り手も、中にいる人も皆が幸せを感じられるような理念を持った会社と一緒になり、皆で集まって良い世界を作る、という構想です。

 

――「ポスト資本主義」への活動に取り組もうとされたきっかけは何だったのでしょうか?

創業前からご縁があり、HASUNAにも出資していただいている投資家の谷家衛さんはまさに投資家として「ポスト資本主義」を追求してきた方なのですが、谷家さんと昨年(2018年)改めてこれからの世界のお話をしていて、より多くの人が幸せになれるようなムーブメントを一緒に起こそう、ということで盛り上がったんです。そこから具体的に話が進みました。

私はかねてから鉱山やアパレル産業の末端にいる労働者の過酷な労働環境や児童労働問題、環境汚染などは、行き過ぎた資本主義の中から生み出されるものであると問題意識を持っていました。

「安く買い叩いて、できる限り高く売る」ような行き過ぎた資本主義ではない、新しい資本主義のビジネスの形を模索したいと考えて行動してきましたが、ジュエリーのビジネス以外でも、このような取り組みを行いたい同じ志を持った起業家や経営者と一緒に仕事をすることで、ムーブメントを起こしたいと思います。それで今、谷家さんと一緒にポスト資本主義の姿を追求するCO Inc.[コー・インク]という会社を創ろうと準備中です。

 

――“これまでの資本主義と異なるものを目指す”とは、具体的にどんな内容でしょうか?

従来までの資本主義は、規模の追求や上場を最速で目指したり、売り上げや利益を追求することが価値の定義になっていました。そうではなく、皆で共存、共栄できるような新しい資本主義の世界が作れるのではないかという仮説からきています。これまでの資本主義が西洋的な価値観であるとすると、皆が共存、共栄できる資本主義の形は東洋的なものであるとも思っていて、日本から世界に発信したい価値観でもあります。

たとえば、起業して利益ばかり追求していると、起業家自身や働いている人も疲れ果ててしまう。それが「ハッピーなのかな?」といったら、決してそうではありません。ファッション業界では、大きくなりすぎると働いている人たちのモチベーションも下がりがちで、ユーザーが心から欲しいものが作れているかというと、そうではないことが多いように感じます。従業員が数人から数十人規模の組織の方が、雰囲気も楽しくてクオリティも高くいい物を作っていたりします。

ファッション業界だけでなく、そうした小さいけれど”いい会社”が、どうしたら適切な規模でサステナブルに成長をしていけるのだろうかというのが、自分の中に命題としてありました。そうしたものも、この動きの中で追求していきたいです。

 

――海外の労働者と一緒にお仕事をされることが多いと思いますが、どのような点が日本人と異なりますか?

時間や納期の感覚が大きく違いますね。遅れることも多いので、あらかじめ余裕を持つようにしています。ビックリすることもあって、アフリカのルワンダにある牛の角の研磨をしている工場と取引をしているのですが、そこで働いている夫婦が喧嘩を始めて、牛の角を柔らかくするために煮る鍋の油をひっかけるといったこともありました(苦笑)。

あと、私ではないですが、アフリカでパン屋を起ち上げた日本人の起業家がいるのですが、そのパンが輸送中に食べられてしまい、目的地に着いた時には半分ぐらいなくなっていたということもあったそうです。そうした普通ではありえないことが頻繁に起きるので、日本人とは全く違いますね・・・。

 

後編では、実業家・白木夏子さんに「お金の心配がなくても今の仕事を続けるのか?」など、お金と仕事に関する質問に答えていただきました。
後編はこちらからご覧いただけます。

●プロフィール

白木夏子 NATSUKO SHIRAKI(オフィシャルサイト

HASUNA Founder&CEO
1981年、鹿児島県生まれ。起業家。

英ロンドン大学卒業後、国際機関、投資ファンドを経て2009年4月に株式会社HASUNAを設立。

ジュエリーブランドHASUNAでは、パキスタン、スリランカ、ベリーズ他、世界約10カ国の宝石鉱山労働者や職人とともにジュエリーを制作し、エシカルなものづくりを実践。日本におけるエシカル消費文化の普及につとめている。

2018年には「パートナーシップのあり方を問い直す」をコンセプトに掲げたプロジェクト《Re.ing[リング]》をクリエイターの高木新平氏とともに立ち上げ、LGBTを含む多様な家族観・パートナーシップの社会意識変革を行う。


日経ウーマン・オブ・ザ・イヤー2011キャリアクリエイト部門受賞。

2013年には世界経済フォーラム(ダボス会議)にGlobal Shaperとして参加。

2014年には内閣府「選択する未来」委員会委員を務め、Forbes誌「未来を創る日本の女性10人」に選ばれるなど多方面で活躍。

会員登録を
すると…

無料会員登録で
挑戦者たちの日々の進化を
見逃さない!

会員ログイン後に見られるコンテンツ

  • 挑戦者たちの
    ブログ

  • メンタリング&近況報告
    動画

  • 挑戦者たちの
    詳細情報

  • スペシャルコンテンツ
    「働き方の最前線」閲覧

すでに会員のかたはこちらからログイン

本サイトはRPA BANK会員の登録を行うことで、
より多くのコンテンツをお楽しみいただけます

rpa bank会員の登録が必要です。

新規会員登録
表 表